2012年3月30日金曜日

夜明けに向かって (展示のお知らせ)



今回は4月に行うグループ展について書いていきたいと思います。
















まずはグループ展「night fell」の詳細です。
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グループ展「night fell」 (produced by FLOR)
場所;下北沢ギャラリー Shimokita Art Space Cスペース(http://www.shimokita-art.com/)
会期;4月17日(火)-4月22日(日)
OPEN;12:00-20:00
参加作家;渥見芽以、泉順太郎、小松杏里、野尻芽久美、濱口拡美 and FLOR
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ゆったりとした空間になる予定です。
どうぞアートに身を委ねにきてください。
展示のテーマは「night fell」。
これは「夜の帳が下りた」という意味。
みなさんは、「夜」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょう。
今回の展示のサブテーマは「生きている ただそれだけで さみしい夜」。
1人の夜の孤独感や寂しさにフォーカスしていきます。
作家たちがそれぞれに思うそんな一人の夜を様々なメディアで魅せてくれます。

私自身が今回の展示に際して思うこと、
そして、前回の展示から今回の展示にかけて考えたことを、少し言葉にしてみようと思います。
この展示を企画したちょっとしたきっかけを2つお話します。
ちょっと長くなります。ご了承ください。
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夜とは、誰もが持つ特別な時間です。
当然のごとく毎日やってきて、私たちはいろんな方法でその時間をやりすごして、朝を迎えます。
夜にはおそらく2つの種類があります。
ひとつは、誰かと過ごす楽しい夜。
(もしかしたら気後れしたり、時々気疲れしたり、たまに失敗したり。。。)
もうひとつは、ひとりぼっちの夜。
それは、孤独を思う夜。時に、寂しい夜。
そのどちらも多くの人が経験してきた夜です。
そして、誰もがそんな夜に育てられてきたし、これからもそうでしょう。

夜の楽しさは誰かと分かち合うことができます。
経験として、誰かと夜を分かち合うことはできます。
しかし、ひとりぼっちの夜、
それは、決して誰かと分かち合うことのできぬ夜です。
夜、わけもなく、孤独の淵に立たされたとき。
誰も自分の孤独をわかってくれないのではないかと、思ってしまったり。
自分独りだけが世界にポツンと取り残されたような気分。
寂しい夜、
孤独な夜、
その重さは、一人で持って歩くには重すぎるときもあります。
たまには誰かに寄り添ってもらいたいときもあります。
誰にだってそんな孤独や寂しさがあります。

分かち合うことはできないかもしれないけど、
誰かの思う寂しい夜に触れ、
共感したり、
あぁ、こんな孤独もあるのかと、
知ることはできると、私は思います。
それは、あなたの心をほんの少し明るくしたり、ほんの少し軽くしてくれるかもしれません。
作家さんたちが表現する孤独な寂しい夜たちは、
きっと、あなたが思う夜にあなたが思うのとは違う意味を与えてくれるかもしれません。
私は、アートというものが、あるいは、その経験が、
そうやって誰かの心にそっと寄り添ってくれればいいな、と思います。
それが、この企画のひとつの始まりです。
もうひとつの始まりについて。
これは、私自身が、夜について考えたことです。
はじまりのはじまりといってもいいかもしれません。
もうどうしようもないこと、
他愛のない日々の記憶、
色あせた思い出、
もう会わないかもしれない人のこと、
漠然とした将来のこと、
あやふやな不安、
日常の些細なこと。
私たちは、日々、頭には浮かんでは消えていくことをもてあそびながら生きています。 
1人の夜には、昼間はやり過ごせていたようなどうでもいいことが頭をぐるぐるして、
大なり小なり、感情の波の中で、記憶と思考の渦にのまれていきます。
後になって思えば、前回の展示を企画した時の私は、
ものすごく、感情と記憶と思考にがんじがらめにされていたように思えます。
今回の展示を企画するまでの間に、いくつもの寂しくて孤独な夜を過ごしてきました。
夜、ふとした瞬間にやってくる、ぐるんぐるんとまわる記憶と思考にふりまわされては、
感情の起伏に辟易していました。
でも、そんな中でも、いくつもの発見や気づきを得たり、いくつかの覚悟を決めたりしてきました。
いくつも過ごしてきた夜の中で、
少しずつ前に向かって歩く準備をしてきたのだなぁ、と、今は思います。
私たちは、すぐに記憶に縛られたり、
一時の感情に流されたり、 
どうでもいいような些細なことばかりを気にしたり、
そんな風にできているんだろうけど、
そこからちょっと身を離してみて、待ってみる。
そうすると、案外、くだらないことに思い煩っていることがあるものです。
大事なことは、ちゃんと私の目の前に、単純な形であるのです。
孤独という夜にそっと身を沈めるということ。
寂しさが去ってゆくのをじっと待つこと。
今は、ただそれだけが正しい行為のように思えます。
夜という時間は、いつかの夜明けを待つための時間なのだと思います。
今回の展示の「night fell」というテーマは、
前回の展示を企画し始めた時から時間を経て、
私自身の「夜」というものに対する意識の変化をきっかけにしています。
しかし、これは企画するにあたってのきっかけにすぎません。
そして私自身の考えにすぎません。
作家さんたちがどんなふうに夜をとらえているのか、
企画した私も楽しみにしています。
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夜のとばりが下りた。
それは、夜明けまでの静かな時間の始まりです。
是非、足をお運びください。

文責 FLOR nari